テラヘルツ・レーダー


  車載レーダーは,前方車両との距離・速度の検知によるクルーズコントロールや衝突不可避時のドライバーへの被害軽減など安全性向上のために重要であり、これまでにも光波(近赤外光)を用いたレーザーレーダー方式や電波(ミリ波)を用いたミリ波レーダー方式が実際に実用化されている。レーザーレーダー方式は指向性の鋭いレーザー光を用いて高精度な測距が可能であるが、車両の汚れや天候(雨・雪・霧)の影響を受け易い。一方、ミリ波レーダー方式は雨・雪・霧などの悪天候下においても前方の車両を検知できるが、高精度な測距は困難であった。従って、一長一短を有する両レーダー方式の長所を融合できれば、理想的な車載レーダーが可能になると考えられる.
  光波と電波の境界に位置するテラヘルツ電磁波(THz波:周波数0.1THz〜10THz,波長30μm〜3mm)は両者の性質を併せ持つことから、上記のような要求を満たすレーダー波として有望であると考えられる。しかし、THzレーダーを実現するために必要なレーザー光源や高感度検出器などの開発が遅れていた。近年、安定な超短パルスレーザーの出現と超高速光技術の進展により、パルス状THz波(THzパルス)の発生及び検出が容易になり、THzレーダーを実現するための要素技術が整備されつつある。そこで我々は、THz波をレーダー波として利用することにより、従来レーダー方式の短所を補うと同時に長所を融合し、天候の影響を受けることなく高精度な測距が可能なTHzレーダーの研究開発を行っている。


 

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